不動産を所有している方にとって、毎年課税される固定資産税は避けられない出費です。しかし、「うっかり払い忘れた」「事業が悪化して支払いが困難になった」など、様々な事情で税金を滞納してしまうケースも少なくありません。
もし固定資産税を滞納し続けてしまうと、最終的にあなたの大切な財産が「公売」にかけられてしまうという、非常に重い結末を迎える可能性があります。
この記事では、固定資産税の滞納が招く公売という仕組みを詳しく解説し、万が一滞納してしまった場合に「何をすべきか」「どうすれば公売を回避できるか」について、具体的かつ現実的な対策をお伝えします。
あなたの不動産と生活を守るために、ぜひ最後までお読みください。
1. 固定資産税を滞納すると始まる「恐ろしい」プロセス
固定資産税の納期限を過ぎてしまうと、すぐに公売になるわけではありませんが、事態は確実に深刻化していきます。滞納から公売に至るまでの一般的な流れを理解しておきましょう。
(1) 延滞金(延滞税)の発生と督促状の送付
納期限の翌日から、まずは延滞金(延滞税)が発生します。これは、納税が遅れたことに対するペナルティであり、遅れれば遅れるほど金額は増えていきます。
多くの場合、納期限から20日以内に督促状が送付されます。この督促状には、滞納分の税金に加えて延滞金の支払いも求められます。この段階で支払えば、大きな問題には発展しません。
(2) 財産の「差し押さえ」
督促状の発送から10日が経過してもなお納付がない場合、自治体(市町村など)は法に基づき、滞納者の財産を差し押さえることが可能になります。
差し押さえの対象は、必ずしも滞納の元となった不動産だけとは限りません。
給与や預金口座
自動車
貴金属、骨董品などの動産
生命保険の解約返戻金
滞納している不動産(土地・建物)
給与が差し押さえられると、勤務先に滞納の事実が知られてしまい、生活にも大きな影響が出ます。不動産が差し押さえられると、「差押登記」がされ、その後の売買や担保設定などの処分行為が事実上できなくなります。
差し押さえは、公売に向けた「換価(現金化)」の準備段階であり、この時点で事態はかなり切迫していると言えます。
(3) 最終段階「公売」の実施
差し押さえ後も滞納が解消されない場合、自治体は差し押さえた財産を「公売(こうばい)」という手続きで強制的に売却し、その代金を滞納分の税金に充当します。
公売は、国税徴収法に基づいて行われる行政処分であり、裁判所が行う「競売(けいばい)」とは異なりますが、財産が強制的に売却されるという点は共通しています。
公売は一般の入札・オークション形式で実施されます。
2. 知っておきたい「公売」の仕組みとデメリット
公売は、滞納者にとって最も避けたい結末です。その仕組みと、滞納者が被るデメリットを理解しておきましょう。
(1) 公売の対象と入札
公売の対象は差し押さえられた財産全てです。不動産公売の場合、一般の個人や不動産業者などが参加して入札が行われます。
公売の情報は、自治体のホームページや広報誌などで公告され、誰でも参加が可能です(一部制限あり)。
(2) 公売の最大のデメリット:売却価格が安い
公売の最大のデメリットは、市場価格よりも売却価格が安くなる傾向にあることです。
市場価格の70%~80%程度で取引されることが多い
内覧ができないなど、物件に関する情報が少ないため、買主側もリスクを考慮し安く入札する
滞納者の意思とは関係なく、強制的に売却価格が決定されてしまう
もし自分で不動産を売却(任意売却など)すれば、より高い価格で売れる可能性が高いにもかかわらず、公売ではその機会が失われてしまいます。結果として、売却代金で税金を清算しても、手元に残る金額が極端に少なくなる、あるいは何も残らないという事態になりかねません。
(3) 公売は「中止」される可能性がある
公売手続きが進行していても、買受人が代金を納付する前に、滞納している税金(延滞金含む)が全額納付された場合、公売は中止となります。
ただし、公売手続きが始まってしまうと、その費用も発生しており、全額を一括で納付しなければならないことが多く、ハードルは非常に高くなります。
3. 公売を回避し、財産を守るための3つの対策
「督促状が来た」「差し押さえ予告が来た」といった状況でも、まだ打つ手はあります。重要なのは、行政からの連絡を無視しないこと、そしてできるだけ早く行動を起こすことです。
対策1:何よりもまず「納税相談」を行う
督促状や催告書が届いたら、決して放置せず、すぐに自治体の納税課や税務署に連絡を取りましょう。
行政は、納税の意思がない人を厳しく処分しますが、納税が困難な事情を抱えている人に対しては、話を聞き、柔軟に対応してくれることがほとんどです。
滞納している理由を正直に説明する
現在の生活状況や収入を伝える
「支払いの意思がある」ことを明確に伝える
この交渉により、分割納付(分納)や、一時的に納税を猶予してもらう「納税の猶予制度」などを利用できる可能性があります。公売を回避する上で、最も重要で最初に行うべき行動です。
対策2:差し押さえ前に「任意売却」を検討する
滞納額が大きく、自力での分割納付が難しい場合は、差し押さえが実行される前に不動産を売却することを検討しましょう。
通常の不動産売却:滞納している税金を売却代金で完納し、残った資金を生活費などに充てます。公売よりも高い価格で売却できるため、手元に資金を残しやすいメリットがあります。
リースバック:自宅を売却した後、売却相手と賃貸契約を結び、家賃を払いながらそのまま住み続ける方法です。売却で税金を清算し、住まいを失わずに済む可能性があります。
特に、差し押さえがされる前であれば、通常の市場で売却活動ができるため、買主もスムーズに見つかり、高値での売却が期待できます。
対策3:すでに差し押さえられた場合の「任意売却」
すでに不動産が差し押さえられている場合でも、売却は不可能ではありません。これを任意売却と呼びます。
任意売却は、債権者(この場合は自治体)と交渉し、差し押さえを解除してもらうことが必要になります。売却代金を滞納分の固定資産税に充てることを条件に、解除に応じてもらえるケースがあります。
ただし、この場合、金融機関や不動産、法律の専門家のサポートが不可欠になります。個人で全ての手続きを行うのは非常に難しいため、「任意売却専門の相談窓口」などに早急に相談することが最善策です。
まとめ:放置が一番危険!「相談」から始めよう
固定資産税の滞納は、決して珍しいことではありません。経済的な困難は誰にでも起こり得るからです。
しかし、行政からの通知を「無視すること」だけは絶対に避けてください。滞納を放置すると、雪だるま式に増える延滞金と、最終的な公売による財産の喪失という、最悪のシナリオに突き進むことになります。
ステップ1: 督促状が来たらすぐに納税課に連絡。
ステップ2: 納税困難な事情を伝え、分納などの交渉を行う。
ステップ3: 解決が難しい場合は、専門家に相談し、公売回避のための任意売却を検討する。
あなたの不動産と生活を守るための第一歩は、「勇気をもって相談すること」です。
もし今、固定資産税の支払いに不安を抱えているのであれば、ぜひこの情報を参考に、すぐに専門家への相談を検討してください。
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